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「破壊してもいいのでしょうか?」
早稲田大学助手 小川明子
著作者人格権には、同一性保持権というものがある。著作者の製作した作品が、そのままの形で維持されることを主張することができる権利であり、近年では、歌謡曲の「おふくろさん」を歌手である森進一が、歌詞を追加して歌ったことで、作詞家の逆鱗に触れたという事件が記憶に新しい。
そう、著作物は、著作者の同意なしに、改変したり追加したり切断したりすることはできないのである。改変をした同一性が保たれていない作品を存続させることは、同一性保持権の侵害となるが、それでは存続させずに破壊するとすればどうなるのだろうか。 破壊という概念にもよるが、無体物として保護される音楽と文芸の原著作物においては、通常問題とはならず、懸案は、作品の多くがキャンバスやら石膏やらの固定された形で表現される、美術の著作物が破壊行為については問題を生む。
モナリザの原著作物に髭を描くことが、改変であるとすれば、モナリザを破壊してしまうことも、原作品の形に手を加えるという意味において、改変と同様であるように思える。 ましてや、一点しかない原著作物を破壊してしまうことだけで、罪の意識を感じる人も多いのではないだろうか。著作権についていえば、破壊は最大の改変行為であり、同一性保持権の侵害であるとする説もあるものの、改変は許されないが破壊はやむを得ないという見解が大多数を占め、わが国の多くの判例もその例に漏れない。
しかし、アジア諸国には、このような権利について、別の解釈をする国家が存在した。インド著作権法である。インドでは、自国の法をベルヌスタンダードに合わせるために、著作者人格権の保護範囲を縮小したという非常に興味深い国である。 Amar Nath Sehgal v Union of India 事件では、著名な彫刻家Sehgalの壁画が一部取り壊されたことに対し、裁判所は差止を認めており、この判例によってインド法における同一性保持権が、著作物を完全な破壊から保護することができることが示されたという(*1)。 著作者は、同一性保持権の侵害と主張する場合、それが、自身の名誉や評判に影響を与えるような改変行為であることを示さなければならない。作品が破壊された場合、著作者の評判に影響を与える主題が残されていないことがその理由となるというのである。
さて、西早稲田キャンパスの銀杏が黄色く染まる頃、別冊NBL「知財年報2008」が刊行される。この続きは「知財年報2008」でどうぞ。
(*1) Mira Sundara Rajan, "Moral Rights in Developing Countries: The Example of India" 小川明子訳 知財年報2008掲載予定
(2008/10/17 update)
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