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「一つの成果、一つの知財」 ―北京オリンピックの後書き―

客員研究員 兪 風雷

 今から百年前の1907年、周恩来の母校である南開大学の創立者・教育家である張伯苓(中国のオリンピック先駆者)は、天津での第5回連合競技会閉幕式で、「アテネ五輪」と題する演説を行い、史上初めて中国のオリンピック参加を提議した。 そして、1908年5月、雑誌「天津青年」(Tiensin Young Men)が五輪に対して中国はいつ選手を派遣できるか、いつ金メダルを取れるか、いつ五輪を開催できるかといった三つの問いを提起した。
 百年後の2008年8月8日、五輪史上最多の204ヶ国・地域が参加した北京オリンピックが開催された。張芸謀の総監督による4時間の開会式は最新技術を駆使し、1万4000人も動員されたアトラクションでの壮大な催しに、四大発明を中心とした中国の五千年の歴史が絵巻のように再現された。 中国の伝統と世界を融合する華やかな幻想的な演出で、10万の観客を酔わせ、改革開放30周年の成果を見事に表現した。ハイテクを駆使し寸分のスキもなく聖火を点火した後も、大会運営でハード、ソフト両面のパワーを見せつけ、24日には、全国が威信をかけて開催した17日間の平和の祭典に幕を下ろした。 大会は最新鋭の施設の効果もあり、43の世界記録、133の五輪記録が生まれる記録ラッシュとなった。中国が51個の金メダルを獲得、五輪史上初めて金メダル数で1位にもなった。
 実際、北京五輪ではネット技術が本格利用され、「デジタルコンテンツの祭典」としても注目を集めた。北京五輪開幕前、チャイナモバイルは全ての五輪関係都市に、独自知財権を有する世界三大標準の一つTD-SCDMAネットワークで五輪史上初の携帯電話テレビサービスを提供し、およそ100万人のユーザーが携帯五輪専用スペースにアクセスし、累計放送時間は30万時間を超えた。 開催期間中、一部の国(*1)を除く多くの国々のウェブユーザーがYouTubeを通じてオリンピック関連のオンラインコンテンツが視聴可能になった。国際オリンピック委員会(IOC)にとっても初めてブロードキャストチャンネルとコンテンツ製作設備を持つオリンピックであった。
 オリンピック特設サイトに訪れたユーザー数は1億6100万人に達し、3200万人がインターネットを利用して開会式の動画を見た。また、中国国内向けの携帯電話用オリンピック主題曲のダウンロード数が573万を記録、携帯電話向けゲームのダウンロードも100万を突破した。 IOCは、「インターネットを含む多様なメディアプラットフォームを通じて、世界中の人が自由にアクセスできるコンテンツを豊富に用意することが著作権侵害のリスクの軽減につながる」と表明し、ジャック・ロゲ会長は「五輪で脚光を浴びることで、中国が世界を、世界が中国をもっと理解するようになる」と語った。
 その一方で、北京五輪組織委員会やIOCがモニタリングしたところによると、開幕3日間で、世界各地で1600の不法中継サイトが見つかったが、そのうちの85%が海外のウェブサイトだった。中国国内全部で100の不法中継が摘発されたが、いずれも二時間以内で対策をとった。 一番早い対応は20分以内で閉鎖させられた。未許可でコンテンツを公開した動画サイトとしては、210万元と410万元の損害賠償請求も行われた。
 また、 知財重視の姿勢も見られ、サッカー会場となった天津へ、北京から最高速度350km/hの高速鉄道工事、スタジアムの建設などオリンピックに関連する特許出願は320件で、その中180件すでに特許を取得した。
 史上最大の五輪は21世紀の大国として中国が国際社会に認知される象徴で、経済発展は新たな段階へ突入した。自ら技術向上する歴史的節目に、「一つの世界、一つの夢」(One World, One Dream)の合言葉にちなんで、平和祭典の成功を祝うとともに、「一つの成果を、一つの知財へ」と、経済大国としてだけではなく、知財大国としても期待していきたい。


(*1) 対象国はインド,韓国,ナイジェリア,インドネシアなどの77の地域で,日本は対象に含まれない。

(2008/09/16 update)

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