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「阿波踊りのエキストラ」

RC 平山太郎

毎年8月のお盆の期間、私の故郷である徳島は阿波踊り一色に染まります。
今年は北京五輪、原油高、開催期間中休日なしという悪条件が重なった中、昨年から6万人減の133万人が4日間で徳島市の中心に集まったそうです。 ちなみに徳島市の人口は26万人で、徳島県全体でも約80万人しかいないので、どれだけ多くの人が一堂に集まったかが分かるかと思います。
徳島駅を出ると眼前に広がる眉山(びざん)のふもとまで、一部を除きあちこちの道路が遮断され、そこに演舞場ができます。 結構知られていませんが、この期間の阿波踊りはどこか一箇所のメインストリートだけで行われるものではなくて、市内のあちらこちらで同時に行われています(リンク先のマップの赤字部分はすべて演舞場です)。 参加する連(踊りの団体のことを「れん」と呼びます)の数は約1000にのぼり、出番を待ちきれない人たちは街頭で勝手に踊っていたりするので、本当に町の至るところで踊られているわけです。
〔2008年阿波踊りガイドマップ〕
http://www.awaodori-kaikan.jp/kankou/awaodori/map2008.pdf

2007年に松嶋奈々子・宮本信子・大沢たかお出演で公開された映画「眉山」(監督:犬童一心、原作:さだまさし)は、この阿波踊りと眉山が頻繁に出てきます。
映画・原作小説のタイトルである「眉山」は、標高290メートル程度のなだらかな山ですが、そのなだらかさゆえにどの方向から見てもまるで眉のようだということで万葉集でも詠まれているそうで、徳島のシンボルとされています(徳島の人にとっての心象風景といってもいいかもしれません)。
〔映画「眉山」の宣伝ブログ:眉山の写真がトップにあります〕
http://blog3.bizan-movie.jp/

実はこの映画の撮影にあたって、徳島でロケがあり、フィナーレの演舞場での阿波踊りのシーンを撮影するために、多くのエキストラが募集されたので、私も里帰りついでに1日だけ参加してきました(エキストラの総数は1万7千人)。 たった1日だけでしたが、撮影途中で雨が降ってきて、隠れるところがないのでビニールシートを雨宿りにしたり、何度も同じシーンを撮るので後列のあまり写らない鳴り物の奏者達が飽きてきて、勝手に踊り始めてしまい助監督に「静かにしてください」と怒られたり、と盛りだくさんで結構面白かったです。 とはいってもずっと待ってるだけのことも多く、映画に携わる人たちの大変さを垣間見ました。
〔映画「眉山」プロデューサーブログ:エキストラ参加で撮影されたシーンがトップにあります〕
http://blog2.bizan-movie.jp/

さて、このエキストラという存在については、著作権法における「実演家」とみるかは争いがあるようです。
ただ、実演家に人格権が規定されたのは平成14年改正以後であって、それ以降にエキストラの権利について論じた文献はほとんど見つからなかったので、ここでちょっと考えてみたいと思います。
日本の著作権法は、実演について、著作物を演劇的に演じ、舞い、演奏し、歌い、口演し、朗詠し、またはその他の方法により演ずることを指し、これらに類する行為で著作物を演じないが芸能的な性質を有するものを含むとし(2条1項3号)、実演家とは、実演を行う者及び実演を指揮・演出する者としています(同4号)。
実演家該当性を否定的に考えるならば、@「実演」の文言を厳格に解釈し、著作物を演じているといえるか否かで判断するべきであること、A微々たるものについてあまり多くの者に権利を認めると利用面で妨げになること、B大量のエキストラの場合そもそも写っていない者もおり(映画「眉山」では自分もそうでしたが)、これをどのように取り扱うべきか困難であること、が挙げられるでしょうか。
一方、肯定的に考えるならば、@「実演」の文言は著作物を演じていることのみを挙げるため、エキストラも例外とまではいえないこと、A数が大量でない場合には通常の俳優と違いがないこと、B実演家として取り扱ったとしても、現行の著作権法において実演家に認められる権利については著作隣接権は権利処理で解決できる問題であり、実演家人格権も、氏名表示権(90条の2第1項)はエンディングロールの氏名表示の省略は慣行により可能であり、同一性保持権(90条の3第1項)についても、出演部分を仮に削除したようなケースでも、「実演の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変又は公正な慣行に反しないと認められる改変」については制限されるので(同2項)、あまり問題はないと思われること、が考えられます。

このBについては、再反論も考えられ、実演家人格権が規定される前であっても、たとえば俳優の首をすげ替えるような行為については、従来より一般的人格権侵害として不法行為法による保護までも否定されていたわけではないことから、不法行為として扱えば足りるとすることもできるでしょう。

実務上は、エキストラといちいち契約する余裕はないとして契約書をかわしてはいないようです(文部科学省文化審議会著作権分科会における児玉委員発言部分)。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/014/05092701.htm
実際、私もエキストラの参加証と参加方法の説明書・注意書きはいただきましたが、出演した影像についての権利放棄などの同意書や契約書の類はいただいておりません。ちなみに参加の報酬は阿波踊りの絵の入った手ぬぐいでした。

これからは毎年8月になると、阿波踊りとともにエキストラの権利について考える夏になりそうです。

(2008/08/18 update)

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