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「ハリーポッターと追及権の秘宝」

RA 小川明子

 ハリーポッターの作者であるJ.K.ローリングスが、ハリーポッターシリーズの番外編「吟遊詩人ビードルの物語(The tale of Beedle the Bard)」を完成させたと報道された。 すべて手書きであり、7冊しか制作されないという。うち6冊は知人らに贈呈され、残り一冊はサザビーズでオークションにかけられると伝えられている。 収益は彼女が共同創設者である子供のための慈善団体チルドレンズ・ボイス(The Children's Voice)に寄付されるという。
 この世界に7冊しかない書籍は、ベルヌ条約第14の3条(14ter)が世界中に拡大すると、作者に更なる収入を与える可能性を秘めている。
 ベルヌ条約14の3条は追及権(Droit de suite or Resale Royalty Right)条項である。追及権は、主に美術の著作物の原作品(original works of arts) が作者の手を離れて再販される度に、 著作者にも販売額の一部が与えられるとする権利であり、一般に、譲渡不能、放棄不能とされる。この権利は、EU加盟国での批准が決定してから、法制度を保有する国が飛躍的に増加し、 現在世界54カ国以上に広がっている。
 ベルヌ条約は、同盟国に対し任意の批准を求めているに過ぎないものの、保護範囲には、美術の著作物のみならず、文芸や音楽の手書き原稿(manuscript)も含んでいる。 この番外編はすべて手書きであり、発行部数が7冊に限られていることから、おそらくオリジナルの原稿に該当すると見られる。
 元来追及権制度は、文芸や音楽の著作者が原稿を複製することでその対価を受けることに対し、美術の著作者にとっては原作品の販売以外には収入源はないという不公平を是正すべきとして生まれたものである。 文芸作品の手書き原稿を保護すべきかどうかについて議論があると同時に、もともと大きな富を得ている著作者への保護が必要かという点においても疑問の声が上がっているという事実がある。
 世界にはベルヌの規定通りに、手書き原稿を保護対象にする国が存在する。何年か、何十年か後に、そのような国で7冊のどれかが、再販されることになれば、その販売額の一部が、 著作者であるJ.Kローリングスの手元に戻ってくる可能性があるのである。
 ちなみにハリーポッター最終巻は「ハリーポッターと死の秘宝(Harry Potter and the Deathly Hallows)」である。この限定の7冊がいつか、 「ハリーポッターの追及権の秘宝(Harry Potter's DDS Hallows)」となる日が来るかもしれない。
 番外編のオークションは12月13日にロンドンで行われる。

(2007/11/13 update)

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