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「幅広く人材を求めるなら」
RC 平山太郎
新司法試験に幅広く有為な人材を募ることを目標として、法科大学院を設置し社会人や理系出身者なども対象とする法学未修者コースを設けて多様な分野の人材を受けているが、 今年明らかになった最初の結果では3割という当初予想よりも低い合格率から、早くも他分野からの転身には見合わないという声があがっているらしい。
新司法試験よりも5年前に、弁理士試験では幅広く人材を求めるため、試験制度を改正し、その効果もあってか、受験者数も合格者数も改正前から大幅に増加しているが、それに伴い多くの問題点も噴出している。
ところで、受験生が大幅に増加するようになった、そのもっとも大きな要因は、試験制度の緩和であろう。
弁理士試験は旧司法試験と同じく、筆記試験と口述試験とに分かれ、筆記試験はさらにマークシートの短答式試験と論文式試験とに分かれており、 1年間に3回の試験をクリアしなければならない。
短答式試験は、産業財産権四法(特許法、実用新案法、意匠法、商標法)とこれらに関する条約、不正競争防止法、著作権法について出題され、 論文式試験はまず産業財産権四法を問う必須科目試験があり、さらに選択科目試験として一般法律や理系の科目が7つ用意されている。 口述試験は論文の必須科目と同じ産業財産権四法についてのみである(試験制度の詳細についてはこちらを参照
http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/benrisi_test_info.htm
)。
このうち、もともと論文式試験まで合格していれば翌年に限り筆記試験が免除される制度があったが、平成14年度より新たな免除制度が導入され、一定の資格を有する者に、論文の選択科目が免除されている。 同時に科目の再編が行われ、「地球工学」「機械工学」「物理工学」「情報通信工学」「応用化学」「バイオテクノロジー」「弁理士の業務に関する法律」という現行の7科目となり、 さらに各科目に「共通問題」と「選択問題」とが設けられた。
しかし、免除対象者と非対象者とが同時に論文式試験を受験することによる負担の不公平感が沸き起こり、選択科目試験と必須科目試験との間に3週間の期間を設けたり(施行当初は必須科目試験の翌日に選択科目試験が行われていた)、 来年の平成20年度試験からは選択科目に一度合格すると翌年以降は永久に免除されるという科目合格制度も導入されることとなっている。
なぜ不公平感をもたらしていたかというと、免除対象となる資格にある。
免除となるためには、試験内容である法律や理系科目と同等レベルの資質があると認められなければならないとの観点から、理系なら技術士、電気主任技術者、一級建築士、薬剤師、一部の情報処理技術者など、 法律系なら司法書士や行政書士などが認められているが
(http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/benrishi_kamokumenjo.htm#sanko1)
、 さらに大学院の修士課程以上を修了している者も事前審査を経て認められている。
しかし、実際にこれらの資格が試験科目と同等レベルにあることを保証するものであるのか、その内容に批判があり(たとえば、大学院進学を選択せずに企業に入って研究開発の実務に従事する技術者からの不満は強いようだ)、 実際に免除を狙って行政書士や情報処理技術者など本来の自分の専門分野以外の資格に手を出したりするケースも目立っていたようである。
一応、法律系の大学院に身を置く者として気になるのが、この大学院の免除者の対象範囲である。この対象者は、「選択問題」に合致する分野の研究をしていることが必要であって(弁理士法施行規則4条1号)、 選択「科目」ではない。したがって、「弁理士の業務に関する法律」の免除については、修士論文の内容が選択問題である「民事訴訟法」、「著作権法」、「不正競争防止法及び私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」、 「行政法」、「国際私法」のいずれかの専門でなければならず、「行政学」や「商標法」等の選択問題に存在しない分野のものでない場合は免除認定されない。
そして、「選択問題」とあることから選択科目試験のうち「共通問題」である「民法」の研究をされている場合も免除とならないとしているのである
(http://www.jpo.go.jp/torikumi/benrishi/benrishi2/benrisi_siken_faq.htm#q20)
。
これは、他の理系科目の場合においては至極当然で、たとえば「物理工学」であれば共通問題が「物理学」という基礎科目であるのに対し、選択問題は「エネルギー工学」や「電磁気学」といった応用科目となっており、縦の関係にある。
しかし、法律系科目については、確かに民法を一般法とする特別法の関係にあるとはいえ、民法分野の研究者というのは、民事訴訟法や国際私法の研究者とは別にいるのであって、横の関係にあるといってよい。
ところが、民法はすべての私法の基礎であるから知っていて当然であるとして、民法の研究者を免除の対象としないのは、あまりにも実態を無視しているといえるのではないだろうか。知財の専門家である弁理士に、不法行為法や債権法を専門としてきた人材を求めようとしないのは不思議としかいえない。
(2007/10/24 update)
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