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「只今シベリア上空」
RA 五味飛鳥
ロンドン行きの飛行機の機内である。機内食のあと寝てしまっていたが、今起きた。シベリアの上空であるらしい。眼下にひたすら真っ白な大地が広がっている。
仕事の合間を縫っての欧州行はきつい。やっと捻出した休暇が10日。この10日の間に生じる仕事をすべて前倒しでやっつけてしまわないと、せっかくの欧州で仕事をする羽目になる。 だから、ここ2週間の仕事量は通常の倍。死ぬかと思ったが、生き残った。そして、とうとうシベリア上空まで辿り着いた。欧州は、もう目と鼻の先である。涙が出てくる。
今回の欧州行は、欧州共同体意匠制度の研究が目的である。スペインの欧州共同体商標意匠庁を訪問し、イギリスでは研究者や実務家に面会する。 有意義なインタビューができれば、と思う。更に、ロンドンで開かれる実務家の国際ミーティングにも参加する。知見が広がれば、と思う。 しかし、ここまで来て気が付いた。違う。誰に会うとか何に参加するとか、そういうことが重要なのではない。本当に重要なのは、このぽっかり空いた10日間ではないか。 なにもない10日間が、目の前に横たわっている。研究しなさーい、と手を振って横たわっている。大変なことだ。
欧州共同体意匠制度は、新しいデザイン保護制度である。デザイン保護の歴史は欧州で長く、そしてそれぞれ独自のポリシーをもって各国ごとに対処してきた。 それが、今ここで大同団結である。ものすごいエポックメイキングなのである。 しかし、我が国では「どうも欧州には相当に便利な制度ができたらしい」という認識が実務者間にある程度で、その基礎理論などを我が国意匠法と対比するというようなことは、あまり多くは行われていないように思う。 つまり言ってみれば、僕は今手付かずの大地の目の前に立っているということである。大地は耕してくれと言っている(ように思う)。 しかも、僕にはちょこっとだけ時間がある(ように思う)。なるほど、これは頑張らねばならない(ような気がしてきた)。
たとえそれがシベリアのように凍てつく大地であったとしても、僕の情熱で溶かしてみせる。
と、軽く意気込みをみせて、このコラムは終了である。再び機内食が運ばれてきたので、先ずはメシに集中である。
(2007/03/20 update)
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