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「中古ゲーム訴訟のその後」
RC 平山太郎
著作権法は数ある知的財産法の中でも改正の頻度の高い法律だと思うが、それは同時に時代の変化に流されやすい法律であることの証しでもある。
争っている間は報道も大きいが判決が下されるなどして一応の決着をみると、その後は報道も少なくなり、 その後どうなったのかすら忘れられていることも多い。しかし、その後の経過と影響を検証することが、 その判断の正しさと隠れた問題点を浮き彫りにするのではないだろうか。
たとえば、喧々諤々の議論を経て成立したものの、iPodの登場により音楽購入の趨勢がCDから直接音楽をダウンロードする販売方法に移行してしまい、 施行から1年も経たないうちに存在意義がかなり薄まってしまった113条5項の還流防止措置(いわゆる輸入権)などは典型的な例かと思う。
一時期脚光を浴びた著作権事件として、中古ゲーム訴訟がある。この訴訟は、 中古ゲームソフトを販売店が自由に販売することが違法か否かが争われたものであるが、メーカーが販売店を98年7月に大阪地方裁判所に訴えた「大阪訴訟」と、 販売店がメーカーを同年10月に東京地方裁判所に訴えた「東京訴訟」とで、ほぼ同時に異なる判決が下されて大きな論争が続くこととなった。
この事件には(1)ゲームソフトが映画の著作物に該当するか、(2)そしてその販売が映画の著作物にのみ認められる頒布権の侵害となるかという中心論点があるが、 99年5月に東京地裁は、(1)について映画の著作物には該当しないので頒布権もないとして、中古ゲームソフトの販売は合法としたが、 同年10月に大阪地裁判決は、映画の著作物であり頒布権が認められるため違法として正反対の論理と結論を導いた。
ともに控訴され、2001年3月27日に東京高裁は(1)について反対に、ゲームソフトは映画の著作物だと認める判断をしたうえで、(2)についてそれでも頒布権はないとした。 これは、個々の複製物が、多数の人々に視聴される場合には頒布権を認めるが、大量の複製物が製造されその一つ一つは少数の人にしか視聴されない場合のものは、 音楽CDや書籍に頒布権が認めらないのと同じく頒布権を認めることはできない、というものである。
ところがそのわずか2日後に、大阪高裁も判決を下した。結論は大阪地裁を覆し中古ソフトの販売は合法としたが、 その理由は、ゲームソフトは映画の著作物であり、頒布権も有するとしたうえで、頒布権は初回の販売(第一譲渡)時点で消尽するため、 その後の販売が適法になるというものであった。
以上、東京と大阪の両地裁と高裁が4通りの判断を下したわけだが、2002年4月に最高裁は大阪高裁の立論を踏襲し、 中古ゲームソフトの販売は適法であると落ち着いた。
その後の報道や審議会の答申によれば、最高裁判決を受けてメーカー側は消尽しない頒布権の創設に動こうとしたり、 販売店側もメーカーと和解すべく売上げの数%をメーカーに還元する交渉をしたりしていたようであるが、いずれも実を結んでいない。
では最高裁判決が下されて4年を経過した今、中古ゲームソフト業界はどうなっているのだろうか。販売店側もメーカー側も次々に淘汰され合併が進んでいるが、 これは中古ゲーム問題によるものというよりは開発能力の増強やコストカットなど企業としての体力をつけるためによるところが大きい。
そして、今ではメーカー側が、発売から一定期間経過後に元値の半額以下の廉価版を出して価格を流動させるようになったことが大きな影響を生んでいる。 廉価版だろうが中身の品質は同じであるため、消費者はわざわざ中古ゲームを買わずとも発売当初よりは安く購入できるようになり、 販売店も在庫品を廉価版の価格にあわせて値下げせざるを得なくなっている。これにより販売店の利益率がかなり落ちて、 必然的に買い取り価格も下がらざるを得ないため、消費者も買い取りに出すよりもネットオークションに出品して直接販売するようになってきた。 販売店は利益率も仕入数も減少し、個人レベルの店は軒並み閉店している有様である。
もともと、メーカーがゲームソフトの価格を変動させることなく発売当初の高値のままで維持しようとしていたために、 中古ゲーム販売が商売として成立していたのである。いわゆる「クソゲー」と揶揄されるようなどんなにつまらないゲームであっても価格が固定されていたため消費者はつまらないゲームはすぐに売りさばき次のゲームの購入資金に当てたり、 購入に迷うゲームを中古で安く購入するなどして、自分が真に欲しいゲームの資金を節約するようになったことが中古ゲーム販売という商売を生み出した。 メーカー側が最初から消費者の志向をつかんで価格を流動的にすることを厭わなければ中古ゲームに悩まされることもなかったのである。
かくして、一定期間を経過したゲームソフトについて廉価版があらわれ、消費者がその価値にあった価額で商品を手にすることができるようになったという恩恵を与えたことは、 中古ゲームソフト訴訟の判決が、その立論はともかく結論は正しかったということを示していると思う。
(2006/11/22 update)
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