(pdfファイル 600KB)
目的
|
拠点リーダー上村達男教授
|
所長略歴
| 所長の声(COE) |
他のコラムはこちら
強きを助け、弱きを挫く−法解釈を忘れた法律家?
株式会社の運転免許証?
規律の重要性を欧米に学べ
中間プレゼン無事終了
中国会社法改正
全体シンポの画期的な意義
責任の履行か損失補填か
超優良企業のガバナンス
一夏の堕落
「一夏の堕落」
一夏の堕落、などと言うといい年をして、夏のバカンスで危険な青春?でもしたのか、と思われそうだが、これは企業法制の話である。 新聞報道でご存じとおもわれるが、UFJ銀行の三菱東京フィナンシャル・グループに対する7000億円の優先株の発行は、突如として議決権を有する三分の一超の株主が出現し、 しかも重要事項についてはこの優先株主による種類株主総会の承認がないと成立しないとされている。かつて三和銀行の株主であった人々は、 持株会社化のための株式移転により、銀行業を営まないUFJホールディングスの株主に無理矢理させられた。その持株会社の株主たちは、 持株会社であるUFJホールディングスが、子会社であるUFJ銀行の100%株主になるものと思って仕方なく強制的にホールディングスの株主になることを余儀なくされた。 しかるに今度はそこに3割以上の株主が突如出現してしかもそこがウンと言わないと大事なことは決められないということになったのである。 彼らがUFJの普通株主総会で重要なことを決めて、それがUFJホールディングスの意思になった場合、 従来ならその100%株主としての決定を子会社であるUFJ銀行に対して強制できた。しかし、今回の優先株発行により、持株会社であるUFJホールディングスは、 もはや持株会社ではなく、三菱東京フィナンシャル・グループがウンといわなければ何もできない会社になるのであるから、もはやホールディングスという名称すら放棄したに等しい。 UFJホールディングスの一般株主たちはまさに株主としての支配権を喪失させられたに等しい。 しかもこうした決定を100%子会社であるUFJ銀行の取締役会だけで行ったのである。 こうしたことを日本の企業が一斉にやり出したらどのような社会が出現するのか。
今回の優先株はUFJ銀行が発行したのだから、株主はホールディングスだけであり、ホールディングスの株主達は代表訴訟も、違法行為の差止めも、 新株発行無効の訴えも提起できないとの形式論がまかり通っているため、こうした事態を是正する手段すら存在しないことになっている。 アメリカならホールディングスの株主が是正のための行為をとることができるが、そうした制度も用意されていない。要はこの種のことはなんでもやり放題であり、 だれもチェックできないのが日本の法制、ということになる。私は、ホールディングスの株主による新株発行無効の訴えを今すぐ判例理論として認めるべきと思う。 これはあまりに当たり前のことである。COE研究所が標榜する「法創造」とはこうした事態を想定した名前である。
拒否権付の種類株主総会は投資だけして経営に直接は関与しないベンチャーキャピタルの立場に配慮して解禁されたものである。 当時からこれを一般企業に解禁したら大変な事態になると懸念されていた。それが現実のものとなっている。 当時これを推進した経済産業省や経済界、楽天的な立法論を後押しした学者達の責任が問われている。なによりも裁判所の責任が大きい。 英米では株主の大半が個人であることもあって、法人向けの第三者割当増資自体が行われない。市民社会の質を壊してしまうからである。 市民に対する敵対行為でしかないからである。日本の一夏の堕落は、歴史に残る堕落としてながく記憶されることになるだろう。
COPYRIGHT 2003
早稲田大学COE<<企業法制と法創造>>総合研究所
Allrights Reserved.
21
st century
C
enter
o
f
E
xcellence,
W
aseda
In
stitute for
C
orporation
L
aw and
S
ociety.